特別講演

中尾 新太郎(なかお しんたろう)

中尾 新太郎 先生

略歴

1998年 鹿児島大学医学部卒業
九州大学医学部眼科学教室入局
2000年 九州大学大学院医学研究院(医化学分野
2004年 同修了 博士(医学)取得
2006年 米国 Massachusetts Eye & Ear Infirmary 留学
2013年 九州大学病院 眼科 助教
2017年 九州大学病院 眼科 講師
2020年 国立病院機構九州医療センター 眼科医長
2022年 九州大学大学院医学研究院眼科学分野 臨床准教授
順天堂大学大学院医学研究科眼科学 主任教授
順天堂大学医学部眼科学講座 主任教授(併任)

これからの糖尿病黄斑症診療を考える

順天堂大学眼科 中尾新太郎

糖尿病網膜症の病態理解が変わろうとしています。我々眼科医は、糖尿病網膜症に対してレーザー光凝固や硝子体手術を行なっても視力低下を免れない症例を多く経験してきた歴史があります。しかし、現在では内科治療の進歩とともにそのような重症化症例は少なくなるとともに、糖尿病黄斑症診療が重要となってきました。特に抗VEGF療法の登場により糖尿病黄斑浮腫は治療可能な疾患となり、その薬剤選択や投与法が眼科医の腕の見せ所となっています。しかし、抗VEGF療法の幅広い普及とともに、これから克服すべき課題も浮き彫りになってきました。抗VEGF療法の繰り返し投与を行なっても治療に抵抗する黄斑浮腫症例や、経済的理由で十分な治療を行えない症例、また黄斑浮腫がコントロールできても視力改善の乏しい症例です。治療抵抗例や経済的問題に対しては各症例における病態を理解しつつ、他の治療法を選択しなくてはなりません。しかし、黄斑浮腫が改善しても視力改善しない症例では、もう一つの糖尿病黄斑症である糖尿病黄斑虚血が関与していることが多々あります。これまで黄斑虚血はあまり着目されてきませんでしたが、OCT angiographyにより検出可能であり、視細胞障害や内層障害を引き起こすことにより、視力障害を引き起こすと考えられています。現在のところ有効な治療法はありませんが、今後はさまざまな治療薬が登場することが予想されます。難治例の黄斑浮腫と黄斑虚血について本講演では考察し、今後の展望についてご紹介します。