白内障セッション

田淵 仁志(たぶち ひとし)

田淵 仁志 先生

略歴

1997年 大阪市立大学医学部 卒業
2002年 大阪市立大学大学院医学研究科 修了
2003年 大阪市立大学医学部視覚病態学 助手
2004年 三栄会ツカザキ病院 眼科医長
2007年 三栄会ツカザキ病院 眼科主任部長 (現在に至る)
2015年 名古屋商科大学経営学大学院 修了
2019年 広島大学大学院医系科学研究科医療のためのテクノロジーとデザインシンキング 寄付講座教授
2025年 兵庫医科大学AI眼科診療システム開発講座 特別招聘教授

専門医等

日本眼科学会認定・眼科指導医
日本眼科学会認定・眼科専門医
博士(医学・大阪市立大学)
修士(経営学・名古屋商科大学)
Executive MBA
日本眼科AI学会理事
日本白内障屈折矯正学会理事
日本白内障屈折矯正学会AI活用プロジェクト委員会委員長

白内障手術トレーニングの実情とAI指導の可能性

社会医療法人三栄会 ツカザキ病院 / 兵庫医科大学 田淵 仁志 先生

本講演では、白内障手術教育の安全域を“見える化”する二本柱――Section1:学習過程の定量分析とSection2:術中AIのリアルタイム解析の二つの視点を提示する。まずSection1として、ツカザキ病院眼科で初めて白内障手術を開始した初心者15名の0例目からの蓄積症例の総4,255例を用い、独自に設定した平滑化アルゴリズムと時系列データの変異点を数学的に抽出するPELT(Pruned Exact Linear Time)法を用いて15名のデータから得た蓄積症例数ごとの術中合併症率の変化点を検出し、学習が離散的な四段階で進むことを抽出した。術中合併症率は4段階で下記となった。〔第1期1–87例3.18%、第2期88–189例1.68%、第3期190–534例0.79%、第4期≥535例0.18%〕。平均0.53%という科内眼科医全体平均水準に到達する目安は535例で、経験速度は約123例で安定化した。初期50例の合併症率は3.1%、535例未満の術者が教育症例全合併症の40.9%を占め、535例までに要する期間は平均経験速度から約3.9年と推定された。さらに第1期から第4期にかけて手術時間は約48%短縮、切開幅はわずかに縮小し、最終視力は同等ながら早期視力回復は後期ほど速かった。これらは指導の集中度・症例配分・難易度設定・レビュー頻度を“段階適合型”に設計する実用的指針を与える(当院では最初の100例(前述の第1期)を助手顕微鏡で指導医と共に、101–200例(前述の第2期)はリアルタイム顕微鏡術野モニターにて指導医が遠隔監督という運用を実施している)。
次にSection2として、我々が研究開発途上のリアルタイム白内障手術技術評価AIを概説する。重要2工程(CCC、核処理)の識別はCCCと核処理を5秒の誤差範囲でリアルタイム同定し、開始・終了時刻の平均誤差は約5秒、重要2工程分類の平均正答率は96.5%であった。次に我々はこの重要工程分析AIをベースにした後嚢破損発生予測AIモデルを作成し、AUC 0.97の精度で後嚢破損を事前予測し、評価用後嚢破損症例動画データ44件中42件で執刀医や指導医より早く破嚢予知が可能であった。破嚢予知AIモデルを手術室で実装デモを行い、研修医に比べ上級医の統合リスク指標が有意に低く、処置時間も短かった。これらに加えて、我々は手術手技そのもののリアルタイム計測にも取り組んできた。その成果としてCCC時の角膜・切開・鉗子先端を高精度にリアルタイムで追跡可能となった。
今回の機会で、眼科臨床教育の1丁目1番地である白内障手術教育への統計学的アプローチと新しい技術(AI)を用いた取り組みを紹介しご理解いただければ幸いである。四段階モデルで教育の「いつ・どこ」を定義し、AIで「いま・ここ」の危険の立ち上がりを示す――両者の統合により、指導・症例選択・遠隔指導・術中AIアラート、AIによる技術評価までを実現するあたらしい白内障手術教育を示す。