特別講演
寺岡 正人(てらおか まさと)

略歴
| 2001年 | 愛媛⼤学医学部医学科卒業 |
| 2001年 | 愛媛⼤学医学部⽿⿐咽喉科⼊局 |
| 2004年 | 愛媛県立中央病院耳鼻咽喉科 専攻医 |
| 2009年 | 愛媛⼤学大学院 修了(医学博⼠) |
| 2010年 | スウェーデン・カロリンスカ研究所 博⼠研究員 |
| 2012年 | 市立宇和島病院耳鼻咽喉科 医長 |
| 2016年 | 愛媛⼤学医学部⽿⿐咽喉科 助教 |
| 2019年 | 愛媛⼤学医学部⽿⿐咽喉科 講師 現在に至る |
加齢性難聴のメカニズムと予防 ―聴こえ8030運動で健康な聴力を―
愛媛大学 寺岡 正人 先生
コミュニケーションにおいて重要な役割を担う「聴覚」は、ほとんどの動物が備えている感覚であり、ひとたびその機能が失われると社会生活に著しい支障をきたす。難聴は身体的・経済的負担にとどまらず、認知機能低下やうつ病の要因ともなる。WHOは2050年までに60歳以上の約25億人が難聴を抱えると予測している。加齢性難聴の発症には遺伝、人種差、騒音曝露、喫煙、肥満などが関与し、活性酸素の蓄積による酸化的損傷が重要な要因とされる。過剰な音刺激や耳毒性薬剤、虚血再灌流障害はいずれも蝸牛内で活性酸素産生を増加させる。予防には、ヘッドホンの使用や騒音環境での曝露を控え、耳栓などの保護具を適切に用いることが重要である。また、内耳虚血の引き金となる動脈硬化を防ぐため、食生活改善、運動、十分な睡眠など生活習慣の見直しが求められる。感覚器は一度障害されると治療が困難なため、障害が起こる前にいかに予防するか、またできるだけ早期に発見し、介入することが重要である。しかし本疾患は病気としての認知度が低く、健診の充実や補聴器普及など社会的啓発が必要である。本講演では聴覚のメカニズムについて概説し、加齢性難聴の発症機序、さらにその予防や治療の可能性について解説する。

